HACCP義務化→第一次生産の対応の難しさ→グローバルな大企業の参入→国内生産の低迷→食の安全確保?2020年、一体どうなってしまうのか、多くの人が知っておかなければいけない問題
HACCP(ハサップ)とは?
HACCPとは「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critical(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」という言葉の略語で、製造系で言えばPDCA、品質管理における継続的な改善手法Plan→ Do→ Check→ Actのように、食品衛生管理におけるトレースアビリティが可能な国際規格
日本語では「危害分析重要管理点」
食品の製造出荷の工程のどの段階で微生物や異物混入が起きる可能性があるか?危害を予測・分析して被害を未然に防ぐというチェック体制であり、エンドユーザーである消費者の食の安全・安心を得るためにとても重要であり、また今後海外輸入製品や国外輸出などに関しても、国際的な標準となっていく事から義務化の方向になっている模様
HACCPの12手順と7原則
以下の項目は食品を扱う企業がHACCPを導入するにあたって必ず行わなければいけない必須項目
- 手順1 HACCPチームの編成
- 手順2:製品の名称や種類、原材料、添加物などの記述
- 手順3:製品の扱い方(加熱・生)、消費者の確認
- 手順4:原材料の仕入れから製品出荷までの製造工程の一覧図の作成
- 手順5:製造肯定一覧図と現場の認識のずれがないかの確認
- 手順6:各工程で危害要因になりそうなものの分析、対処法の検討(原則1)
- 手順7:加熱殺菌・金属探知など危害要因をの取り除く重要管理点(CCP)の決定(原則2)
- 手順8:CCPが適切に制御されてるか判定するための管理基準(CL)の設定(原則3)
- 手順9:CCPが適切に管理・制御されているかのモニタリング方法の設定(原則4)
- 手順10:モニタリングの結果、CLが守られていない時に行う改善策(原則5)
- 手順11:HACCPが適切に機能しているか確認するための検証方法の設定(原則6)
- 手順12:HACCP実施の記録の保存方法を設定し、どの肯定で問題が起きたのかわかるようにする(原則7)
HACCP対応は第何次生産まで及ぶのか?
食の安全を守るために行われる事、それを消費者目線で考えればとても良い事だと思う・・しかし、この項目は食材や製品を提供する加工業者だけで済む話ではないと想像できる
素材加工企業が手順2を実施にするにあたり、生産業者側もHACCP対応を求められるようになる
例えば農家などは、どこの種を使い、どんな方法で生産し、どんな管理をしているのかは、最低限、納品する企業に対し、企業側のHACCPチームの要望に応える必要が出てくる
また、企業にとってもHACCP規格に準拠して生産・管理して品質を維持している生産者と取引をしたほうが「危害分析重要管理点」の面から考えても合理的かつスムーズと言える
以上の事から、このHACCPの義務化は畜産や農業を営んでる小・中規模農家にとっては、対応はかなり難しいと予想できる点がいくつも出てくる
農家がHACCPに対応した場合最大のネックは・・天災と人災
HACCPの12手順と7つの原則に沿った場合、自然栽培している農家では次が問題になる
手順6:各工程で危害要因になりそうなものの分析、対処法の検討(原則1)
農家にとって、天候は読めない、つまり不確定要素と分析はできるが対処は難しい
また自然環境だけに空気中を漂う微生物の混入、昆虫による被害、気温など、その季節になってみないとわからない問題が多々出てくるだろう
また、人災という意味では人為的なミスで起こすトラブルも候補のひとつとなる可能性もある。ハウス栽培であっても温度管理のミスなどによっても生産に影響を与える可能性もある
手順8:CCPが適切に制御されてるか判定するための管理基準(CL)の設定(原則3)
手順9:CCPが適切に管理・制御されているかのモニタリング方法の設定(原則4)
上記手順6の分析結果に対し、仮に対処すると考えた場合、手順8.9では、天災の影響を受けない大規模な施設を作り、温度管理なども人為的な作業ミスによる再発防止が起きないように適切に自動化管理し、確実に害虫被害を起こさないように農薬散布する
という方法でしかHACCPに則った生産ができない
そして、納品先の企業側からもそれが求められる事になる
しかし、負担はこれだけではない
自家製増殖自家製採取禁止法とHACCPの連携
自家製増殖自家製採取禁止法とは自家製の種で栽培すると罰せられる法律
10年以下の懲役と1000万円以下の罰金とまで内容には記載されているとか・・
そんな自家製増殖自家製採取禁止法が15日に法案が提出されたらしいです
15日といえば、台風で各地に甚大な被害がでてますね(そんなタイミングで・・)
※ただ、いち早く動いた9つの県はなんとか自家製の種による栽培は免れていた模様
具体的に言えば、農家はHACCPで認可された種を毎年強制的に買わなければいけないという事
HACCPに則って考えると手順2:製品の名称や種類、原材料、添加物などの記述 の点に該当
認可されて販売される種は出荷の時点でHACCPに準拠している製品として扱われるので、以下に該当するだろう
手順3:製品の扱い方(加熱・生)、消費者の確認
種は製品として販売、買い手は農家なので、種ひとつひとつには製造メーカーで管理されている。という事は、前年度に農家が自家製で作成した種を利用て生産した場合、HACCP規格に対応していないものという事になってしまう
手順2:製品の名称や種類、原材料、添加物などの記述 に記載する事ができないため、企業側が取引を行わないだけでなく、自家製増殖自家製採取禁止法で罰せられる可能性もある
つまり、農家は毎年、種を買うというランニングコストがかかるのだ
本来農家は、生産した野菜から種を増やし、来年度にまた生産数を増やしてというサイクルだったのが・・ただビジネスを行うために、先行投資して利益を出し、その利益の中から捻出しなければならなくなる
HACCP規格対応の大規模自動生産工場しか生き残れない
HACCPという「危害分析重要管理点」をざっくりまとめてしまえば
自然有機栽培の淘汰と大企業のAI化による自動化生産の始まり これに尽きると思います
条件1:安全に生産できる施設を作れる資本が必要
条件2:天災・人災における予期せぬエラーが起きない環境の構築
条件3:品質管理をルーティーンの工程を自動化したAIによる自動生産
条件4:生産から出荷まで安定供給できるHACCP準拠マーケットの確保
この時点で、現在の農家はどうあがいても無理な話ですね。高額な農業トラクターなどをレンタルして将来的な利益で返す予定で借金で使ってる所もあるんですから
率先して導入してるドローンによる農薬散布とかもHACCPで考えれば危険要素いっぱいです
※人為的な操縦ミス・プログラムミス・強風で墜落・それによる生産性の減少等
これは農家を例にしたケースだけど、畜産の場合は食べている飼料や生育過程の記録、自然放牧などによる不確定要素のエラー対応も必要になる
特に今騒がれている野生動物からの豚コレラ感染、鳥インフルエンザなどの侵入経路を断つために、混入や接触を防ぐために電気柵などの設備投資も必要になり、その実証効果もまた記録管理しなければならない
畜産に関しても、世界ではDNAのゲノム編集技術という新たな生産のステージに入ってきた事から、このHACCP規格が法律で義務化されれば、動物の誕生から育成、品質管理から出荷まで工場で行われ、人工物のみで食べていく時代がくるのかもね
食への安全や消費者の信頼とはそこまでしなければ守られないという事なんだろう(理屈的には)
生産業者の規模によっては、うちじゃ対応できないからやっていけない・・と仕事を失うかもしれないという恐怖もあるだろうけど、個人的には自然環境で生産している有機栽培の食べ物と人間の繋がりが断たれてしまうのが怖い
だって種(ゲノム)の認可を出すのは人間(企業・国)だしね・・
自然との繋がりは大切なんだよ
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